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科長(主任教授)のメッセージMessage

産婦人科と良医について

 女性の一生涯において、結婚、妊娠、出産は重要な出来事です。 我々が標榜する産婦人科は、今や妊娠出産のみならず、思春期、性成熟期、更年期、老年期 という女性の一生涯において関わってゆく領域になりつつあります。
 関わるということは、安全・無事に出産させ、病気を発見し治療するのみならず、 疾病予防の方法や健康的生活の方法を提案することなどを含みます。
どのようにすれば、健康を維持できるかについて方向性を示すことも 産科婦人科の務めと考えています。
 金沢医科大学は、開学以来、「良医を育てる」ということを基本的理念にしています。
良医とは、患者に対する思いやりの心を持ち、いつでも、だれにでも最善の治療ができる医師のことであろうと考えています。
今はやりの「スーパードクター」のように、単に技術が優れた医師のことではありません。 誰にもできない手術ができる技術は格好いいかもしれませんが、それは自己満足に過ぎません。
特定の人だけが受けられるような特殊技術ではなく、すべての患者に安全で確実な治療法を提供すること、 またそのような治療法を開発することのほうがより重要と思われます。
 さらに、現在の医療で克服できない疾患に罹った患者に対して、どのような選択枝があるかを示し、 この先どのように生きてゆけばよいかについて一緒に考える態度が医師には重要で、私はそのような事を実践できる医師が良医ではないかと考えます。
 しかし、良医になるのは険しい道かもしれません。 良医として、十分な医学知識を持ち、それを実践できる技術、忍耐力が必要だからです。 そのためには、できるだけ多くの難しい患者を診ること、学会やセミナーに参加して最新の知識を吸収する、 論文を読むことなどが重要です。 外科系では、自分の行った手術をいつでも客観的に評価して、至らなかった点を反省する謙虚さや、 よりよい方法について工夫する姿勢が大事です。
良医になるためには、上で述べたような努力が求められます。

当科の診療体制

 当科では、できるだけ平等に医療技術を研鑽できるようなシステムを心がけています。 診療を専門分野に分けるのではなく、臨床技術を皆が均等に習得できる臨床チーム制をとっています。
 現時点では2チームがそれぞれ周産期、一般婦人科、癌などすべてを扱うようにしています。 各チームは、講師以上のリーダー、サブリーダ、医員、大学院生という構成になります。 患者さんはそれぞれのグループに振り分けられ、基本的に主治医制ですが、チーム全体の責任体制で診療にあたります。 科長は総責任者です。科長は患者を均等に振り分け、診療のなかで産婦人科専門医取得に必要なすべての症例を経験することができよう工夫しています。
 また、周産期、腫瘍、不妊症・性感染症それぞれの専門医を中心に横割りの研究グループも存在します。 これは専門的な知識が必要なとされる患者の診療や研究活動において重要になってきます。 毎週行う臨床カンファレンスでは、それぞれの専門家がチームの垣根を越えて議論する場になっています。 科長はカンファレンスの議論をまとめ、最終的に治療方針を決定します。 また、世界中の第一線の医療を学ぶため、英文抄読会を実施しています。
   2017年の外来診療体制は婦人科(一般婦人科・腫瘍)、周産期、不妊、NIPT (非侵襲的胎児診断)に分かれています。

大学教育と医学研究

 大学の医学部には、3つのことが要求されます。当大学では、診療、教育、研究の順に重要とされているようです。
 私個人の考えでは、本来、大学の第一使命は診療であることに異存はありませんが、、2つ目は研究、3つ目は教育だと思っています。
 学部生教育に関しては、国家試験にパスすることが重要であることは言うまでもありません。 できるだけ効率の良い勉強法を身に着けるように指導しています。
 研究については、まず、私の経験から述べます。 癌による死亡率が増加する現在において、これをいかに予防し、早期に発見し、治療するかが求められています。 一方、末期がん患者においては、いかに苦痛を緩和し、残された時間をいかに過ごさせるかなどが求められます。
 私は、子宮頸癌という癌発生を誘発するヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの研究をしてきました。 これは、現在、日本では中断されている、HPVワクチンのターゲットとなるウイルスです。 大阪大学で4年、そして英国で2年半留学、基礎の研究者に混じって研究をしてきました。 このような研究生活おかげで、今では、なぜ癌が発生するのか?癌の発生をどのように予知するのか?癌をどのように治療するか? などの問いに対して、即答できるし、将来の方向性を示すこともできると自負しています。 産科婦人科の他の領域に関しても、論文さえ読めば、大筋は理解できるようになりました。 これは、長年、英語論文を読み、考え、研究を続けてきた経験によるものです。
研究をしてきたという経験は未知の病気に出会ったときに役立ちます。 なぜなら、研究そのものが未知に対する挑戦だからです。臨床現場の中にいても研究を続けること、研究心を持ち続けることは重要です。 しかし、論文が通りやすいような研究を選別して、ころころテーマを変えるような方法はお勧めできません。 同じテーマで研究を続けないと見えないものがたくさんあるからです。 それが、たとえ小さな発見であっても、その喜びは他にかえがたいものです。
 国際学会で自分の発見を発表すると、同じような事をしている人、それを称賛してくれる人、 まったく反対の考えで反論してくる人が必ずいることに気づかされます。 その人たちとの交流は、将来、大きな財産になるでしょう。
 当科では基礎医学との連携も進めています。 しかし、我々は医師ですから、将来、臨床に役に立つ可能性のある基礎研究を奨励します。
 各大学院生やスタッフが、上のような姿勢で研究を進めてゆけるよう環境を整備し、指導してゆくのが私の務めです。 希望者には海外留学も支援します。
現在、研究グループは、大きく、腫瘍グループ、内分泌グループ、周産期グループ、性感染症グループに分かれており、 それぞれ講師以上がリーダーになり、助教、医員、大学院生、外部研究員の構成になります。 現在当科には、大学院生、中国人留学生(大学院生)、企業の研究者(ポスドク)がいます。

西洋医学と統合医療の推進

 西洋医学の進歩によって、産婦人科が関与する疾病のうち、生殖、免疫、内分泌、自律神経、感染などに関連する疾患の多くが克服されつつあります。
 例えば、私が若い医師であったころには、月経痛の治療として消炎鎮痛剤や子宮摘出手術しか選択肢がありませんでした。 最近では、ホルモン剤、神経遮断剤、向精神薬、漢方薬など様々な薬剤が用いられるようになり、手術せずに、治療できるようになりました。
のように西洋医学の発展には目覚ましいものがあります。 しかし、西洋医学のみでは克服できない疾患もまだ沢山あります。 それらを補完するのが補完医療です。 当科における補完医療の柱として、漢方薬治療とがん免疫療法を考えています。
 西洋医学以外のすべて、例えば鍼灸やヨーガなどを含めて統合医療と呼んでいます。 2017年10月から、私は日本統合医学学会・石川県支部長を拝命いたしました。
 東洋医学に基づいて処方された漢方薬は、西洋医学が苦手とする更年期・老年期障害、月経前症候群などの不定愁訴に対して威力を発揮します。 これまで、西洋医学の薬には即効性があるが、漢方薬はそれがないとされてきました。 しかし、正しい薬剤の選択により即応性があるものもあることが分かってきました。 また、西洋薬に漢方薬をうまく併用すれば、西洋薬の副作用を軽減でき、西洋薬単独より効果が上がることを発見しました。
 当科では、妊娠悪阻などにはできるだけ漢方薬を単独で用い、月経過多、月経困難症、不妊症、早産、更年期障害、子宮筋腫、 子宮内膜症の治療には、西洋薬と漢方薬の併用治療を実践し、効果を上げています。
 効能にしたがって処方された漢方薬の有効性はせいぜい6割とされていますが、 証と呼ばれる東洋医学的な診断法にしたがって処方すると8割以上の有効性を示します。
 もちろん漢方薬が嫌いな人には勧めません。 漢方薬は、治療の選択肢を増やし、西洋薬の副作用を軽減し、不足する部分を補完する意味があります。
 癌による死亡率が増加する現在において、これをいかに予防し、治療するかが求められています。 予防に関して、私は、子宮頸癌予防HPVワクチン接種、子宮頸がん検診を勧めてきました。 現在は子宮頸部前がん病変に対する非手術治療(フェノール療法)を開発中です。 一般に進行癌の標準治療として、手術、放射線、抗がん剤など行われています。 しかし、これらの治療のみでは克服できない症例があることも明らかになりつつあります。
 そこで第4の治療としてのがん免疫治療に期待が集まっています。最近では、PDL-1抗体を用いた治療の効果が注目され、期待度はさらに上がっています。 癌細胞は自分の細胞の遺伝子が変異したものであるため、免疫システムが癌を自己と認識して攻撃できないか、その力は弱められています(免疫寛容)。 PDL-1抗体治療は、癌に対する免疫を制御するPDL-1という物質の作用をブロックする方法であり、免疫チェックポイント・インヒビターと呼ばれています。
 我々が注目しているのは、この方法ではなく、免疫アクセレレーターとしての牛結核菌(BCG)の細胞膜(CWS)によるワクチン療法です。
 この方法は1970年代に大阪大学元総長の山村雄一先生によって開発され古くて新しい方法です。 原理は丸山ワクチンと同じように、結核患者には癌が少ないというデーターから開始されました。 新しいという意味は、我々が用いているSM105は細胞骨格以外の不要な部分が除かれた新しい製薬であるということです。
BCGの細胞膜(CWS)を皮膚に接種することにより、そこに潰瘍を形成させるほどの強い炎症を誘導します。 その炎症のおかげで、癌細胞を殺すキラーTリンパ球を活性化させ、癌を攻撃させるのです。 いわば免疫寛容によって眠らされている免疫を覚醒させる方法といえます。 丸山ワクチンよりも副反応は強いですが、より有効と考えています。
 手術、抗がん剤治療にBCG-CWSがん免疫治療を組み合わせることにより、最近我々は、初期癌のみならず、 3、4期の進行子宮頸癌を寛解状態に導くことに成功しました。
 また、進行卵巣癌・卵管癌の再発予防や子宮肉腫再発後の進行阻止にも成功しています。 今後、いいものを柔軟に取り入れた統合医療を発展させてゆきたいと考えています。

以上のメッセージに賛同いただける患者さん、研修医は当科にお越しください。

問い合わせ先 : info@kanazawa-med-obgy.jp ; 笹川 寿之
         ※必ずお名前とご連絡先のメールアドレスをご記入ください。